ペイロールカード導入前に懸念されるキャッシュレス化の課題

ペイロールカードの導入とともに、日本でもキャッシュレス化が進むと見込まれています。一方で、現状の国内にはインフラの整備をはじめとした多くの課題が残されており、キャッシュレスを浸透させるにはこれらの解決が望まれています。今回は、日本のキャッシュレス化の課題についてお伝えしていきます。

ペイロールカード導入で注目を集めたキャッシュレス

デジタルマネーによる給与支払いは解禁間近といわれています。従来の給与支払いでは、現金による支払いを前提とした銀行振り込みが主流でした。これに対して、ペイロールカード宛ての支払いが可能となれば、キャッシュレス化が推進すると考えられています。

利便性の向上をはじめ、さまざまなメリットが期待されているキャッシュレス化ですが、日本では依然として現金の利用が多い状況です。今後、日本がキャッシュレス化を推進するうえで、現状どのような課題が残されているのでしょうか? ここからは、国内の現状と課題についてご紹介していきます。

インフラの整備に残された課題

そもそも日本は、キャッシュレスに対応できるインフラが社会全体で十分に整っていない状況にあります。一方で、諸外国では政府や金融機関が主体となってキャッシュレスのインフラ整備に取り組み、社会全体に浸透しつつある状況です。

アジア諸国でも、キャッシュレスのインフラ整備が進んでいます。たとえば、韓国ではクレジットカードの利用促進を行ったり、店舗でのクレジットカードの取り扱いを義務付けたりと、政府主導での取り組みが実施されました。結果としてクレジットカード市場が成長し、キャッシュレス化の促進につながっています。これにより硬貨の発行が削減でき、発行コストを下げるメリットもあったようです。

中国では、80以上の金融機関が共同で決済ネットワークの「銀聯」を設立し、電子決済のインフラが整備されました。さらに、アリババ社がスマートフォンアプリを利用したモバイルペイメント「アリペイ」を開発し、国内をはじめ全世界200以上の国や都市で利用されています。上記の例のように、世界各国におけるインフラの整備に続いて、国内でもキャッシュレスに対応可能な環境が求められています。

※参考:経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」

キャッシュレス対応店舗が増えない背景

日本では、電子マネーの「Suica」が2000年に登場し、すでに公共交通機関ではICカードで支払いをする人が多くみられるほど浸透しています。しかし、それでも世界的にキャッシュレス化で後れをとっているのは、依然としてキャッシュレス対応の店舗がそれほど多くない点が理由のひとつとして考えられています。

店舗がキャッシュレスに対応できない要因として挙げられるのが、導入費用の高さです。各種デジタルマネーでの支払いに対応するためには、店舗に決済のための専用端末を導入する必要があります。この導入費用や、設置スペースの確保、インターネット回線の用意など、店舗が設備を整えるための負担が大きいのです。比較的利用者の多いクレジットカードも、店舗への手数料が発生することから、主に中小規模の個人経営店では導入のハードルが高いといえます。

デジタルマネーに対応しないままでも顧客からの強い要望がないため、特に導入するメリットを実感できないケースもあるようです。現金の取り扱いについても、すでに正確性の高いPOSレジを導入済みであれば、十分に効率の良い対応ができます。これらの事情から、キャッシュレス対応の店舗が増えにくいと考えられています。

プライバシーやセキュリティに対する顧客の不安

デジタルマネーのメリットとして、セキュリティの高さが挙げられます。キャッシュレスは、すべての決済の記録が自動的に残ることから、盗難や不正利用の予防につながると考えられているのです。その一方で、このようなデジタルマネーの特性について、顧客のプライバシーを懸念する声もあります。

たとえば、購買履歴などのデータを収集されることで、知らぬ間に個人情報を利用されることを不安に感じる意見が少なくありません。支払い情報は単なる決済の記録にとどまらず、趣味嗜好を含めたプライベートな情報が多数含まれています。取り扱いには十分に注意が必要といえるでしょう。

また、システムに何らかのトラブルが生じることで、個人情報の流出などのリスクが懸念されています。不正利用などの不安があることから、主に高齢者を中心として現金の安全性を信じる顧客が多いのが現状です。キャッシュレス化を推進するにあたり、これらの悪いイメージの払拭と、安全性の確保が急務となっています。

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日本でも推進されつつあるキャッシュレス化。しかし、現状はインフラの整備に課題が残されており、今後の市場の成長に影響を与えるとみられます。“ペイロール導入間近”といわれる今、キャッシュレス化の課題を着実に解決し、安心して利用できるインフラを整えることが重要といえるでしょう。