給与支払い改革前におさらい!プリペイドカードの基本

国内でのデジタルマネーによる給与支払いが解禁目前となり、“給与支払い改革”が起ころうとしています。そこで知っておきたいのが、給与支払いに用いられるプリペイドカードの一種「ペイロールカード」です。

ペイロールカードについて知るためには、まずプリペイドカードの使い方や特徴について、理解しておきましょう。今回は、プリペイドカードの基礎知識についてお伝えしていきます。

アメリカで導入された「ペイロールカード」とは

キャッシュレス化において各先進国に後れをとっている状況にある日本。その一方で、アメリカではキャッシュレスの普及を背景に「プリペイドカード」の市場が急成長を遂げています。アメリカの消費者金融保護局の発表によれば、プリペイドカードの使用額は、2012年にはすでに約650億ドルに達しているようです。

アメリカではプリペイドカードの使用者も増加傾向にあります。民間非営利団体「Pew Charitable Trusts」から発表された情報によれば、2012~2014年で約2,300万人がプリペイドカードを定期的に使用しています。これに対して、日本におけるプリペイドカードの使用は、あくまで生活の一部に留まっている印象があります。

そんなアメリカで普及しているプリペイドカードのうち、昨今日本でも注目を集めているのが、給与支払いに用いられるプリペイドカードの一種「ペイロールカード」です。ペイロールカードとは、企業からの給与の送金先として機能するカードを指します。デジタルマネーとしても利用ができ、たとえばカードでの買い物も可能です。

日本の厚生労働省でも、2019年にデジタルマネーでの給与の支給が解禁される方針が発表されました。ペイロールカードは、今後多くの企業で導入が進むと考えられています。ペイロールカードへの対応準備を行うとともに、給与支払い改革が従業員のライフスタイルにもたらす影響について、事前に理解しておきましょう。

プリペイドカードの仕組みと特徴

プリペイドカードは、現金をあらかじめデジタルマネーとしてカードに入れておくことで、加盟店で利用できる仕組みになっています。このようにカードに現金を入れることを「チャージ」と呼びます。利用者が加盟店でプリペイドカードを使用すると、その後は加盟店とプリペイドカード業者の間で、決済処理が行われる仕組みです。

プリペイドカードは、基本的に審査なしで作成ができ、口座振替登録が不要となっています。銀行口座の開設が困難な場合でも利用しやすいことから、たとえば外国人労働者をはじめとした雇用において、プリペイドカードの活用が期待されています。

プリペイドカードへのチャージやプリペイドカードの購入は、コンビニエンスストアをはじめとした幅広い店舗で対応可能です。チャージしたプリペイドカードは、実店舗だけでなく、オンラインストアでも利用できます。カードの種類によっては、海外での利用もできるようです。

プリペイドカードが普及して使用可能な加盟店が増えれば、キャッシュレス化につながると考えられています。日本でペイロールカードが導入され、生活との関わりが生まれることで、今後プリペイドカードの使用者が増えるかもしれません。

クレジットカードやデビットカードとの違い

私たちの身の回りには、さまざまな支払い方法があります。プリペイドカードと似ているものとして、クレジットカードやデビットカードなどがありますが、それぞれどのような違いがあるのでしょうか?

まず、クレジットカードと異なり、プリペイドカードは前払式です。事前にチャージしたデジタルマネーの金額の範囲でしか利用ができません。それに対して、後払い式のクレジットカードは、利用可能額の範囲であれば自由に使えるのが特徴です。チャージを行う必要はありません。一見すると利便性が高いように見えますが、申込みに審査が必要であり、使いすぎのリスクがともないます。

一方のデビットカードは、利用するたびに銀行口座から金額が引き落とされます。このような支払い方法は「即時払い」と呼ばれています。銀行口座の残高の範囲で利用ができ、残高以上の金額を使うことはできません。クレジットカードと比較して、使いすぎのリスクがやや低いといえるでしょう。ただし、事前にチャージした金額の範囲内でお金のやりくりができるという意味では、プリペイドカードのほうがより管理をしやすいかもしれません。

ペイロールカードの実現へ向けての課題

利便性の高いプリペイドカードですが、日本ではキャッシュレス化の推進へ向けて、インフラの整備が今後の課題となっています。

たとえば、アメリカのペイロールカードは、現金化するときに手数料が発生することが課題です。日本でペイロールカードが導入される際は、同様に現金化の手数料が課題となるのを防ぐために、手数料なしでの現金化が条件として盛り込まれています。

ただし、社会全体にキャッシュレスが普及すれば、現金化の必要性が低くなる可能性があるため、手数料の課題が解決へ向かうとの見方もあります。今後のキャッシュレス化へ向けて世界各国の動向を踏まえ、改革が始まろうとしている段階です。

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プリペイドカードの一種であるペイロールカード。今後は国内での導入が検討されているため、従業員のライフスタイルに影響を与えると考えられています。導入に先立ち、キャッシュレス化について理解を深めておきましょう。